補聴器をつける基準とは?難聴を放置するリスクとは
音や会話などが聞き取りづらい方の耳をサポートしてくれる補聴器ですが、「聞こえ」の程度は人それぞれです。補聴器をつけた方がいいとされる明確な基準はあるのでしょうか?また、補聴器をつけるべき年齢や使い始めるタイミングは?この記事では補聴器をつける基準や難聴を放置するリスクについても解説します。
補聴器をつける基準は40db以上の難聴
難聴の程度や聞こえ方は人それぞれで、補聴器をつける基準は明確に定められているわけではありません。ただ、日本聴覚医学会難聴対策委員会やWHOでは補聴器をつける目安は、40db以上の難聴であることとしています。
40dbといわれてもイメージが沸かない人も多いかもしれません。具体的な聞こえレベルとしては25dbから40db未満の小さな声や騒音の中で聞き間違いや聞き取りづらさを感じるケースは軽度難聴とされています。軽度難聴の場合は会議や商談など仕事の場面で支障が出ているなどの改善目的では補聴器の適応となることがあります。
40dbから70db未満では普通の声のボリュームでの会話の聞き間違いや聞き取りづらさを自覚するレベルで、中等度難聴といわれます。このレベルになると補聴器を推奨される対象となります。
さらに70dbから90db未満では、非常に大きい声か補聴器に頼らないと会話が聞こえない、または聞こえても内容まで聞き取りすることができないといった場合には高度難聴に分類されます。
このレベルになると補聴器の着用は生活する上で必須になります。難聴だと自覚していても自分がどのレベルかわからないという人も多く、早期に補聴器をつけた方が良い場合もあるため耳鼻科や補聴器の専門店で相談してみましょう。
補聴器をつける年齢
補聴器をつける年齢に具体的な決まりはありません。ですが、年を重ねるとともに聴力が低下しやすいのは確かです。45歳から54歳で聞こえが悪いと自覚しているのは男性で約5%、女性は約9%で、そのうちの9割以上の人が補聴器をつけるほどではないと思っています。
まだまだ視力が低下しづらい年代ということもあってか、補聴器所有率は男性で約0%、女性が約1%です。聞こえに非常に敏感な人や聴力の低下が顕著な人が補聴器をつけるケースが多いようです。55歳から64歳では男性で約7%、女性で約10%の人が聞こえの悪さを自覚しています。
現役で働く人も多いため、聴力の低下が気になりはじめても補聴器をつけるかどうかは検討する段階であることが多いようです。65歳から75歳で聞こえが悪いと自覚しているのは男性で約16%、女性で約19%と、60歳代にもなると単語の聞き間違いや聞き取りづらさが目立ってくる傾向にあります。
65歳以降から軽度難聴に該当する人も増えてきますが、補聴器所有率は約1%です。75歳以上で聞こえが悪いと感じているのは男性で40%、女性で38%です。この年代になると3人に1人が聞こえの悪さを自覚しており、10人に1人は補聴器を所有しているという結果が出ています。
難聴を放置するリスク
音の聞こえづらさは日常生活のうえで会話がスムーズにいかない、テレビの音が聞き取りにくいだけでなく身体機能にも大きな影響を及ぼす場合があります。聴覚器官は身体機能に密接に結びついており、難聴を放置してしまうと認知症の発症リスクが上がったり、交通事故や転倒のリスクもあります。
逆に難聴に早期に対処することができれば、認知症の要因の9.1%を予防できるというデータも出ています。イギリスの英国長期加齢調査では3,000人を対象に認知症と補聴器について調べたところ難聴がある人は健聴な人に比べて記憶力の低下がみられることがわかりました。
それに比べて補聴器を装着している人は記憶力の低下がみられませんでした。難聴で周囲の音が聞こえづらいことによって周囲の人とのコミュニケーションが取りにくくなり、社会から離れてしまうことによって認知症のリスクが上がるものと考えられています。
また、聞こえづらいことによって車や自転車の音が聞こえづらくなることから交通事故が起こりやすいといわれています。周囲の危険予知は視覚情報だけでなく聴覚情報も非常に重要です。同じような理由から、転倒のリスクも高くなります。高齢者の転倒はそのまま介護になってしまう可能性もあるため、できるだけ早期に補聴器をつけるなどの対策が必要です。
まとめ
聞こえが悪くなるというのはそれだけで精神的にストレスですが、日常生活や身体機能にも影響を及ぼすことがわかりました。補聴器は音を聞き取りやすくするだけでなく、会話がスムーズにできるようになるため周囲とのコミュニケーションを円滑にしてくれるメリットもあります。高齢になってから補聴器を使うと操作や取り扱いが難しく感じてしまうこともあるのでなるべく早めに使い始めることをおすすめします。とくに65歳以上で聞こえの悪さを自覚している人は補聴器を検討する良いタイミングです。補聴器の早期装用は聞こえを維持するのはもちろんのこと、認知症予防や健康寿命を伸ばすこともできるのです。補聴器はレンタルもできますので、まずは試してみてはいかがでしょうか。